玖珠盆地の南側に、「万年山」と書いて「はねやま」と呼ばれている山がある。柱状節理が見事な山で、山野南面は断崖絶壁となっている山だ。紅葉の美しい2017年の11月、法善寺側から山頂を目指すも、頂上部の台地に出ると笹藪に登山道が消えていて、下山路が不安になり、山頂目前で引き返した頂きでもある。今回は北側の林道を辿って吉武台牧場まで車で入り、此処から再度山頂を目指す事にした。
林道ゲート12:05→避難小屋12:25→登山道入口12:30→万年山12:35~50→登山道入口12:55→避難小屋13:00→林道ゲート13:15
舗装された作業道を歩き始める (2019年1月)
林道ゲートの脇にある駐車場に車を停めて、舗装された牧場の作業道を登り始めた。始めはカラマツ等の雑木林の中を進むが、歩くにつれて視界が開け、眼下に玖珠盆地が一望できる様になった。冬晴れで遠望が効き、気持ちの良い道だ。台地状の万年山の山頂部が見える様になると、程なく避難小屋を通過して林道終点となった。此処からは300段の階段道だ。ミヤマキリシマの咲く頃は、大勢の登山者があるのだろう。登山道は過剰な程に整備されていて、途中迄は簡易舗装されている処もあった。
山頂より前回辿り着いた辺りを見下ろす
300段の階段が終わると傾斜が緩くなり、広々とした山頂に到着する。冬晴れの一日で、南東に九重連山、東に由布岳、北に玖珠盆地が望める山頂は気持ちが良い。南東方向の山頂台地を見下ろすと、2017年の秋に辿り着いた辺りの笹原が、すぐ近くに見降ろせた。距離にして200m位であろうか。本当にすぐ近くまで来ていたのだなと、改めて確認する。2017年に下から見上げた時には、台地上の山頂部だけに何処が山頂標識のある場所なのかが判らず、何より帰路の道迷いを恐れて撤退した事を思い出した。眺めが良く気持のよい山頂を楽しんだから、今回も下山後の温泉を楽しみに山を下ることにした。
黒猪鹿登山口11:20→おしがおの台12:25→頂上平坦部12:35~13:05→おしがおの台13:20~25→黒猪鹿登山口14:20
法善寺側から山頂を目指す。(2017年11月)
登山ルートは車で8合目まで上がれる北側と、麓の黒猪鹿集落から九州自然歩道を辿る南側の二つのルートがあるが、柱状節理を眺めながら登る南側ルートを取る事にする。黒猪鹿集落の天満社付近までレンタカーで入り、此処から歩き始めた。天気が良く空は快晴。11月にも係らず暖かく風もない、絶好の登山日和だ。道は暫く、九州自然歩道にも指定されている林道を進んでいく。車を止めた集落から約1時間で、「おしがおの台」に到着。ススキの原の向こうに、見事な柱状節理が発達した万年山を望むことができる様になった。作業道と交差する辺りに万年山1.0キロの標識があり、此処からは登山道となった。
雁払われたススキの中を進む道は、次第にスギ林の中を登る階段状の道となり、樹林帯を抜けるあたりから道が怪しくなる。何とか踏み跡を辿り、草と低木が混じる斜面を登るようになるが、益々道が混沌としてくる。直角に曲がった地点には、帰路見過ごさない様に小枝の柱を地面に建てて慎重に進んでゆくと、やおら展望が開け平坦な草地に出た。200m位先に山頂部と思われる少し高い場所があるが、この辺りからは背の高い笹に覆われ道は全く不鮮明になった。
山頂を目前にして撤退
踏み跡も分からない笹原を、藪漕ぎしながら進むのは少々危なく感じ、山頂を目の前にして引き返すことにする。来た道をゆっくり戻ると、岩の上に赤テープが落ちている。ホッとしながらそのまま踏み跡を少し下ると、突然道が消えた。一瞬「道迷い」の恐怖も感じたが、時間はまだ早い。場所をずらさないように木の間を行き来する事約15分、漸く登りの時に建てた目印の枝を見つける。ホツとした。ここからは慎重に道を外さない様に、帰路を戻り登山口に戻る事が出来た。
久しぶりに山頂を踏めないヤマとなった万年山であるが、今日の宿である麓の壁湯温泉「福元屋」に着くと、通された部屋の名が何と「万年」。山頂には立てなかった万年山ではあったが、宿の部屋が「万年」という事も何かの奇遇。また来なさいという事なのだろう。後で宿の人に聞くと、地元の人は皆、北側の8合目まで来るまで入り、此処から登っているとの事。再度の挑戦を誓った万年山であった。