支笏湖畔の北側にあり、今なお噴煙を上げる活火山の山が恵庭岳である。天を突くような頂上岩峰が特徴の山で、遠くから見てもそれとすぐわかる山体をしている。その奇怪な岩峰と、東基部の爆裂火口が、正に山は生きていると実感させてくれる山だ。
秋の短い北海道だが、この年は10月に入っても天気の良い暖かい日が続き、紅葉を楽しみながらの山登りとなった。展望台から振り返った時の、真青な支笏湖の景色が忘れられない恵庭岳である。
恵庭岳登山口(7:45)⇒五合目(8:30/40)⇒見晴台(9:15/20)⇒第二見晴台(9:50/10:05)⇒六合目付近(10:30/40)⇒恵庭岳登山口(11:40)
紅葉の中を歩き始める
ニセコのチセヌプリへ登った翌日も、天気予報は好天を告げていた。北海道の10月には珍しい、暖かで穏やかな日になるという。夕方の飛行機は千歳18時発の羽田行き。交通の便を考えて、千歳にも近い恵庭岳に登ることにした。
札幌のホテルを6時過ぎに出発、国道453号線を南下して支笏湖畔にある登山口には7時30分に到着する。登山口にはすでに多くの車が停まっていた。短い秋の北海道の山、今日は数少ない山紅葉を楽しめる機会の様だ。登山道は森林の中、涸れた沢を横断する処から始まった。
歩き始めて直ぐ「二合目」の標識が現れる。きっと支笏湖畔が「0合目」なのだろう。五合目辺りまでは、深い混合林の中を歩く。六合目付近から紅葉の中を歩く様になった。木々の美しさを追いかけて登っていく。息が切れて少し休んでいると、健脚な地元の登山者が追い越して行った。「ロープまでもうすぐです」と声をかけられ、再び歩き始めて数分、「登り専用」の標識が現れた。今日の登山路で一番急な登りだ。斜面の窪みに付けられたロープは、上り下りが別れていて、傾斜はそれほどでもない。ただ斜面がザラついていて靴が滑り易くなっていた。ゆっくり上れば問題はない。ロープで高度を稼ぐと、程なく「第一展望台」に到着した。
第二展望台の仮山頂。
「第一展望台」はザレた岩場の傾斜で、ここから恵庭岳の山頂部が良く見える。そして振り返れば、眼下に真青な支笏湖。実に気分の良い場所だ。
現在一般登山道の終点となっている「第二展望台」へは、ここから爆裂火口の淵を回り込んで約30分で到着。既に沢山の登山者で賑わっていた。此処から先、登山道はついているが、2005年に起きた山頂部の崩壊で、通行止めになっていた。ただ看板には「ここから先の入山は自己責任」とあり、必ずしも強く入山禁止にはしていなかった。この日も何人かが山頂へ向けて歩いて行っており、怖いもの見たさの気持ちもあったが、今日は夕方の飛行機で東京へ帰る日だ。危険を冒すのは止めようという事で、第二展望台にある仮の山頂標識で記念撮影、下山の途についた。
下山は支笏湖畔の伊藤温泉で汗を流す。秘湯的雰囲気を持った温泉は味があったが、設備を求めるならば丸駒温泉の方が良さそうだ。千歳へ向かうのに支笏湖温泉を経由しようと思ったが、湖畔の道が大渋滞。結局Uターンして恵庭渓谷から千歳の街へ出る事になった。
今年も何とか北海道の山旅を楽しむ事が出来た。10月の難しい時期に天候に恵まれ、暖かな陽気の中で2山に登れたことに感謝しつつ、北海道の地を後にした。