大雪山一帯の山域で、ひときは黒々として屹立した頂を持つ愛別岳。孤高を誇る山容からか、アイヌ語で「矢の川」の意味を持っている山でもある。麓の愛山渓温泉から北鎮岳へのルートを辿り、比布岳の手前から派生した尾根を下り本峰に至るのだが、道は痩せ尾根・砂礫の道で、登山地図でも破線扱いの山になっている。「単独行ではどうかな」と思いながら後回しにしていた頂に、2016年の夏、漸く登る事が出来た。
初日は空路で旭川へ入り、上野ファームへ立ち寄り花を愛でてから、レンタカーで登山口を確認しに愛山温泉へ。それから層雲峡まで走り幕営、翌日の早朝からの行動に備えた。
登山口4:35→滝の上分岐5:45→永山岳7:45/55→愛別分岐8:30→山頂9:10/25→愛別分岐10:00→比布岳10:10→愛別分岐10:20/30→永山岳10:55→滝の上分岐12:10/20→登山口13:30
朝焼の愛別岳を拝んでから歩き始める
愛山温泉に到着すると、夜明け前の赤い空に、目指す愛別岳がスックと立ち上がっている。今日の長い行程に気を引き締めながら、安全登山を祈願しながら装備を固め、歩き始めることにした。登山口は温泉小屋のすぐ裏手、入山届けを提出し登山道に踏み込む。暗い樹林帯を一気に登る登山道。歩き始めて20分程で立派な標識の建つ三十三間分岐を通過。イスミの沢の右岸を進んでいくと、進行方向左手下にテープを見つける。地図で確認するも左手へ曲がるのはおかしいと思い直進。やがて道は地図通り右手に曲がり、程なく沢を横断する場所に到着。地図を確認しながら歩いて正解だ。
次第に開ける展望、ガスがかかり始める。
沢を渡り滝の上分岐からは、台地状になっている永山岳への一気の登りだ。高度を上げるにつれ視界が開け、眼下に沼の平の湿原地帯が見える頃には平坦な道になってきた。ただこの辺りからは、道が樋状になっていて泥濘、歩き難い。滑らない様に一歩一歩足を進める。やがてハイマツ帯を抜けると、道は高山植物の咲く岩稜帯を進む様になった。
永山岳から愛別への分岐へ
歩き始めたころには雲一つなかった空だが、次第にガスが湧いてきて、永山岳の山頂に到着する頃には、目指す愛別岳は雲間から見えたり隠れたりする様になってきた。愛別岳のスカッとした写真が撮れないのが残念だ。安足間岳への分岐を過ぎて少し歩くと、稜線上に愛別岳への分岐を示す、小さなプレートが目に留まる。ここから下の下る斜面、確かに踏み後はあるがなんとも不鮮明で頼りない。覚悟を決めて、急な砂礫帯をゆっくり下り始めた。
遥かなる頂へ
比布岳への稜線から分岐している愛別岳への稜線。砂礫が積みあがった小ピークを幾つか越えていくと、次第に目指す愛別岳が大きくなって来た。途中で一か所、岩を抱きながら足場を確保する場所があったが、それ以外は慎重に足をおく位置を選べば問題は無い感じだ。愛別への最後の登りも、思ったほど危険な斜面ではなかった。歩き始めて約4時間半余り、漸く愛別岳の山頂に到着だ。山頂についたころにはガスが濃くなり展望がなかったのが残念な愛別岳だったが、充実した山歩きに浸ることが出来た頂きであった。