「街から近くて安全に登れて、展望が良く花も楽しめる山。」そんな山が身近にあったらばどんなに幸せだろうと思うが、伊達紋別岳はまさにそんな山である。北海道では雪の少ない胆振地方にある明るい山で、登山適期も長い。標高が低い割に展望が素晴らしく、何より登山道が良く整備されていて初心者でも安心して登る事が出来る。春から初夏にかけては登山道脇を沢山の花が彩り、特にシラネアオイの咲く時期は秀逸だ。そんな伊達紋別岳を、5月の下旬に訪ねた。
登山口6:45→三合目一望台7:15~25→七合目8:00~10→前紋別岳8:35→紋別岳8:55→9:10→前紋別岳9:30→七合目9:50~55→三合目一望台10:20→35→登山口10:55
北海道山行の三座目
5月の北海道の山旅3日目、胆振地方の伊達紋別岳を訪ねた。5月の北海道の山は2回目で、今回の山旅のメインはアポイ岳だ。2~3日目は、いわば「おまけの山」で、登る山を決めたのも好天を伝える天気予報を聞いてからだった。2日目に定山渓の神威岳、3日目に伊達市の紋別岳を訪ねたのだが、両山供にアポイに負けず劣らが良い山で、実に充実した3日間の山旅となった。
地形図には「紋別岳」と記載されているが、同名の山が他所にもある事から伊達を冠して「伊達紋別岳」と呼ばれる事が多い。登山口は伊達市の郊外にある社会福祉事業団「太陽の園」の中にあり、登山者が多いのであろう、登山口手前には登山者専用の駐車場が設けられていた。
有珠山は春霞の中
標識に従って、登山道入口から桜の花の下を潜って施設の裏山へと入る。カラマツ林に入ると直ぐ登山ポストがあった。届けを済ませて歩き始めると、直ぐに1合目の標識が現れ、林が途切れた処で、早速シラネアオイが歓迎してくれた。登山道脇には、次第に小さな花々が現れ始め、2合目の標識を過ぎるとスズランが現れる。登山口から約30分、3合目の一望台に到着する。普段であれば休むのには少し早いのだが、今日は時間に余裕がありザックを下ろす。登山道の北西側に展望が開け有珠山が望めるのだが、今日は生憎と春霞がかかっていて、残念ながら薄ぼんやりとした景色だった。
低山の稜線漫歩
3合目からは、明るい尾根筋の道を進む事になる。歩き易い路で快調に歩みを進めた事で、4合目と5合目の標識を見逃した。標識はまだかなと思っていたら、次に気が付いたのは6合目の標識だった。道の真ん中に鎮座する「ガンバレ岩」が現れると、7合目の「いっぷく平」までは間もなくだ。
7合目の「いっぷく平」は、丁度樹林帯を抜けた処にあり展望が良い。紋別岳から南へ延びる尾根筋の小ピークで、此処から登山道は大きく左へと曲がる。紋別岳方面へは笹原の緩い尾根筋が続いていて、目指す紋別岳方面の視界が広がり、展望の山旅に期待を持たせてくれる。5月にしては暑い一日で日影が無いのが辛かったが、幸い良い風が吹いてきた。笹原のなだらかな尾根筋には花畑は無いが、登山道脇には点々と高山植物の花が咲いていて飽きの来ない道だった。展望と花を楽しみながらの低山での稜線漫歩も良いものだ。
初心者に是非登ってほしい山
7合目から見えていた頂きに到着すると「前紋別岳」の標識が立っていて、紋別岳の山頂は此処で初めて見える様になる。一旦鞍部へと下り、9合目の標識9合目の標識を越えた辺りは、シラネアオイの群落が見事だった。
登山口から2時間余りで紋別岳の山頂に到着する。眼下には伊達の市街地から太平洋方面が一望のもとだ。洞爺湖方面が、春霞ではっきりと見えなかったのが残念ではあったが、展望と沢山の花を楽しむ事が出来た。標高が高くない割には展望が素晴らしく、花も楽しめる伊達紋別岳。登山道の整備も行き届いていて危険な処も無い。「山を好きになるか嫌いになるか」は、最初に出合った山の印象に左右される事が多い様に思う。最初に連れていかれたのが花の時期の伊達紋別岳だとしたら、きっとその人は山の虜になる事間違いないであろう。簡単に展望と花を楽しめる伊達紋別岳。お気に入りの頂が、また一つ増えた。