上越国境にスックと聳える双耳峰の谷川岳。登攀の舞台として、余りに有名な山である。この谷川連峰を新潟側から見た時に正面に見えるのが、どっしりとした茂倉岳だ。谷川岳の裏に隠れてしまっている観があるが、谷川連峰での最高の標高を誇っている。谷川岳から茂倉岳を見ると、谷川岳の奥山の様にも見える山で、谷川岳からの稜線、特に一ノ倉岳から茂倉岳への稜線は、山岳景色が素晴らしい。この茂倉岳を、梅雨の合間の好天をついて訪ねた。
天神平7:20→穴熊沢避難小屋7:50→天狗溜場下8:00~05→肩ノ小屋8:45~55→谷川岳オキノミミ9:05→一ノ倉岳10:00~05→茂倉岳10:20~30→一ノ倉岳10:50→オキノミミ下11:30~45→谷川岳オキノミミ11:55→肩ノ小屋12:10~20→天狗溜場下12:50~13:00→穴熊沢避難小屋13:10→天神平13:40
朝一番のロープウエーで天神平へ
谷川岳へ向う多くの登山者が利用する谷川岳ロープウエー。標高1320mの天神平まで、一気に運び上げてくれる。ロープウエーの麓駅には、5階建ての駐車場を備えたベースプラザがあり、6時15分に到着すると、係の人が丁度2階へと上がる通路を開けていた処だった。2階の帰りに出庫し易い場所に駐車し、装備を固めてから6階にあるロープウエー駅へ向かう。休日のロープウエー始発は朝7時。10分前から乗車券の販売が始まった。ロープウエーは20人位乗れる大型のゴンドラが3分毎に出ていて、約10分で天神平へ。いよいよ山旅の始まりだ。
涼しい空気の中を快調に登る
天神平からの登山道は、最初はゆったりとした道で始まる。木道や木の階段が整備されていて歩き易い。この日は前日の雨で木道が湿っていたため、滑らない事だけを注意して歩き進んだ。30分程で熊穴沢避難小屋を通過。小屋の少し先から、岩の坂道が現れ始めた。
岩の坂道は、所々に鎖も設けられていたが、特に鎖を使わなくても登れる程度の斜度だ。岩斜面を何度かクリアしていくと、視界の開けた場所に出た。正面に谷川岳の山体が大きく、「オジカ沢の頭」から「万太郎山」へと稜線が左手に伸びている。ここで一服、山景色をゆっくりと楽しむ。当初は此処が、登山地図にある「天狗の溜まり場」だと思ったが、歩き始めて10分程登った処に「天狗の溜まり場」の標識があった。
谷川岳通過
この辺りからは、肩の小屋へ向けての最後の上りになる。小屋の下は階段状に整備された登山道になるが、その脇に小さな残雪が残っていて、冷たい水が流れだしていた。歩き始めて約1時間30分、肩の小屋に到着。小屋の周囲では、シナノキンバイが黄色い花を付けて、景色に彩を添えていた。
肩の小屋から、縦走路をひと登りで「トマのミミ」、一旦鞍部を下り登り返して「オキのミミ」を通過する。谷川岳の頂上だけあって何人もの登山者が休んでいたが、今日の目的地は未だ先の頂だ。「オキのミミ」の少し先の祠に鳥居が建っていて「奥の院」と記されていた。今日の安全登山を祈って、手を合わせる。この鳥居の前に立つと、その向こうに一ノ倉岳と茂倉岳が並んで見え、谷川岳の奥の院が茂倉岳であるかの様にも見えた。
一ノ倉岳へ
谷川岳から一ノ倉岳への登山道は、一気に高山の登山道らしくなり、大きな岩を跨いだり、壁をへつったりの道となった。花の種類も増え、登山道の両脇に次々と現れる様になる。足元には高山植物、視線を上げると上越国境の山並みという、歩くのが楽しい道が続く。
一の倉岳への最後の上りは、真上に上がる様な結構きつい登りだったが、危険な処は無かった。天神平から丁度3時間の歩行で、一ノ倉岳の山頂に到着。笹原の中の穏やかな山頂だ。振り返ると谷川岳の双耳峰が美しい。此処から茂倉岳迄のコースタイムは20分。小休止の後、直ぐに歩き始めた。
稜線漫歩で茂倉岳ヘ
一ノ倉岳から茂倉岳への稜線は、一転して穏やかな道になる。笹原越しに雄大な山並を眺めながらの稜線漫歩だ。残雪のある鞍部を越え、緩やかな登り返しで茂倉岳の山頂に到着。正面には白砂から苗場への山並、左手には万太郎から仙ノ倉へと伸びる上越国境稜線、右手には近くに朝日岳、山並みの間から尾瀬の燧ケ岳や至仏山…。そして振り返ると、一ノ倉岳から双耳峰の谷川岳。谷川岳も茂倉岳から見ると実に優美に見える。何時まで見ていても見飽きない山並みに、心を奪われた茂倉岳であった。
茂倉岳ヘの招待
今日の行程で特に楽しかったのは、谷川岳から茂倉岳への縦走路だ。特に一ノ倉岳から茂倉岳への道は緩やかな道で、展望を楽しみながら稜線漫歩が楽しめる。その割に谷川岳で引き返す登山者が殆どで、人が少なく静かな歩きが楽しめる。谷川岳まで登って時間が許すならば、是非とも茂倉岳まで足を伸ばすと良いと思う。
花の山
今回の山旅では、沢山の花々と出会った。特に谷川岳から一ノ倉岳への稜線歩きは花の道で、谷川岳まで来て、ここで引き返すのは勿体ないと感じた。