信州北部の雨飾山と焼山の間に、金山という2000m峰がある。妙高・火打の頚城山塊の主峰群と雨飾山の間にあって、目立たない山ではあるが、花の山としては面白い山だ。小谷温泉の奥にある登山口から往復8時間の長丁場の登山道は、時には尾根を辿り、時には沢筋を辿る変化のある道だった。途中、1950m付近のガレ場を越える箇所は、足場が崩れやすく注意を要するが、概ね歩き易い登山道が続く。途中の天狗原山から金山にかけては高山植物の花畑が広がる雲上の楽園で、訪れた時も数多くの高山植物の花に出会う事が出来た。盛夏特有の夏雲で、焼山と火打岳の雄姿が拝めなかったのが残念だったが、充実した山旅をすることが出来た金山である。
登山口6:00→水場6:50~7:00→乗越し7:45~50→ガレ場上部8:15~30→天狗原山9:20~30→金山10:05~20→天狗原山10:50~11:00→ガレ場上部11:40~55→乗越し12:10~20→水場12:50~13:10→登山口1340
登山口より九十九折の道を登る
東京を1時過ぎに出発、上信道で長野に入りオリンピック道路で白馬へ。国道148号線から小谷温泉へと入り、林道笹ヶ峰小谷線脇の登山口には6時少し前に到着出来た。登山口付近は駐車スペースが2カ所あり、既に4台の車が停まっていた。訪れる人の少ない山と聞いていたが、高山植物の花が咲くこの季節は登山者が結構いる様だ。コースタイムの長い山の時は、何人か登山者がいると気分的にホッとする。今日も約8時間のコースタイムの長い山であり、先行者がいるのはありがたかった。ほぼ同じ時刻に登山口に着いた2人連れに少し先立ち、登山口で標識を確認。暑い一日が予想され、何時もより少し多めの水を持って歩き始めた。
水場からブナ立尾根へ
登山道はブナタテ尾根の取り付きまで、九折の坂を登って行く。道端には山アジサイが咲き、濃い青色をしたサンカヨウの実が山深さを感じさせてくれる。尾根にとりつき、登山道が大きく右に折れ暫く登ると、小広場の水場に出た。冷たい水が美味しく、頭に巻いたタオルを冷やして一休みする。水場からはブナ林の稜線の登りで、途中視界が開け北アルプスの峰々を遠望する事も出来た。この辺りから、ミヤマママコナ、ソバナ、アキノキリンソウ等の花が現れ始めた。
花畑のガレ場を慎重に登る
右側が切れ落ちた岩壁が現れ、岩を左側に巻いてしばらく行くと、道は狭い沢筋に入る。樋状になった壁面には苔が生えており、足元は滑りやすく注意して進む。分岐が2カ所出てくるが、赤テープを目印に慎重に歩く。薄暗い沢筋を抜けた処で小さな凸部に達すると、前方に標高1950m付近のガレ場が見える様になってきた。ここで一休み。温度が上がり始め一気に噴き出す汗を拭き、冷たい水を飲む。
岩のガレ場は、右下から左上に向かって道がつけられ、ロープが設けられているが、足場の土が崩れやすく慎重に登っていった。このガレ場付近は花畑になっていて、シナノナデシコやクガイソウ、ホタルブクロ等が登山道脇に咲き乱れていたが、写真に記録しただけで、ゆっくり鑑賞する間もなくガレ場の通過に専念した。ガレ場を登り切った処で、再びザックを下ろして水を飲む。何時もより多めに水を持ってきたのが正解の様だ。
次月と花が登場する登山道
ガレ場から少し歩くと、道は灌木帯の中を進む様になり、登山道脇にはキスゲやヤマユリ、そしてキヌガサソウが現れるようになった。白い薄い花びらが特徴のキヌガサソウの花畑は、今回初めて見る事が出来たものだ。ハクサンフウロやハクサンチドリなど、足元に次々現れる花が見逃せない。
花畑を辿り天狗原山へ
灌木とネマガリ竹で視界が効かない道を抜けると、風景が一変する。突然視界が開け、正面には天狗原山が現れ、辺り一面の花畑に飛び出た。ミヤマキンポウゲやシナノキンバイが咲く草原状の登山道は、明るい高原風景そのもので、吹く風も気持ちよい。標高も2000mを越えるだけあって、日差しの暑さもあるが、風が涼しく感じられた。登山道脇に置かれた石仏から一登りで天狗原山へ到着。山と言ってもなだらかな丘状の山で、山頂標識からは目指す金山が望めるようになった。天狗原山では蜜柑をほう張り、暫く高原風景と山景色を楽しんだ。
雲上の楽園
天狗原山からは、一旦金山との鞍部に下る。沢筋には雪渓が残っていた。鞍部からシラネアオイやツマトリソウが咲く涸沢を登った処にあるのが「神の田圃」だ。ハクサンコザクラ、チングルマ、アオノツガザクラの花畑が一面に広がっていた。道は右にカーブし、金山への最後の登りとなる。東側の片斜面に設けられた登山道は、何回か雪渓を横断しながら進んでゆき、やがて金山の山頂に到着した。
山頂は東側に視界が開け、妙高山、火打山、焼山が並んで望める山頂なのだが、この日は雲がかかり頚城山塊の主峰達を拝むことは叶わなかったのが残念だったが、沢山の花々に出会えた。花の図鑑が出来そうなぐらい多くの高山植物と出会え、充実した山旅となった金山である。