奥秩父の山というと、シラベやコメツガの鬱蒼とした樹林が広がり、林床は苔が覆っている森が延々と続いているイメージがある。300名山を登っていた頃、2004年8月に訪ねた白石山(和名倉山)が、その代表ともいえよう。白石山が奥秩父山塊の東の端にあるのに対して、西の端にあって同様に深い森に覆われた頂が小川山で、以前から訪ねたいと思っていた。実は2012年の11月に廻り目平から登ろうとしたが、途中で登山道が判らなくなり撤退した苦い記憶もある山でもある。今回はコースタイムは長いもの、比較的道が安定している瑞牆山荘からのルートで頂を目指すことにした。
瑞牆山荘6:18→富士見平6:55~7:10→小川山分岐7:25→造林小屋跡7:50→八丁平8:13~23→2290ピーク9:15~25→廻目平分岐10:10→小川山10:13~26→廻目平分岐10:29→2290ピーク11:08~18→八丁平11:55~12:05→造林小屋跡12:22→小川山分岐12:43→富士見平12:58~13:08→瑞牆山荘13:35
瑞牆山荘奥の駐車場より歩き始める
瑞牆山荘奥の駐車場には5時40分頃に到着、既に1/4位が埋まっていたが停めやすい処に車を置けた。装備を固めて6時丁度に歩き始めるが、直ぐタオルを忘れた事に気が付き取りに戻る。再出発したのは6時10分、長丁場の歩きに備えて、ゆっくりと登ることにした。100名山の瑞牆山と金峰山へのメインルートがある為、6時台でも結構登山者が多い。林道を越えて一登りすると、富士見平から西に延びる尾根筋に出た。正面に瑞牆山が見える展望の良い場所だ。休むのには少し早く、そのまま富士見平まで登り一本立てた。
沢沿いの苔生した康かな道を進む
富士見平は幕営地にもなっていて、10張ぐらいテントが設営されていた。以前カタクリ山行で瑞牆山を訪ねた頃のことを思い出す。富士見平の水場でビールとハムを冷しておいたら、何本か飲まれてしまった事があったが、今では懐かしい思い出だ。富士見平からは金峰山への登山道を分け、瑞牆山への登山道を少し歩いたところが、小川山への分岐になる。分岐には大きな標識が立っていた。此処からいよいよ小川山への登山道になる。
分岐からは道がいきなり細くなる。登山地図では破線のルート表示になっているが、それなりに歩く人が多いのだろう。踏み跡はしっかりしている。所々に付けられた赤テープを確認しながら歩く。暫く歩いたところで、登山道は沢筋に降りる。渡渉するのかと対岸に赤テープを探すが、どこにも印が無い。登山道のある斜面が崩れていて、同じ岸の少し先に登山道が続いていた。その先で今度は渡渉し、造林小屋跡に出た。森が開けていて明るい広場があり、傍らにはせせらぎがキラキラ光を立てて流れている。何とも気分の良い場所なのだが、今日は長丁場。造林小屋跡の先で再び沢を渡り返して先へ進む。小川山分岐から50分弱で八丁平へ到着した。
深い森に覆われた中央分水嶺を進む
八丁平から先は、北へ向きを変えて山梨長野県境の、中央分水嶺の稜線を辿る事になる。処所でで大きな岩が現れ、時には捲いて、時には岩の割れ目を登りながら高度を上げていく。平坦な場所ではシラベやコメツガの森が広がり、足元には苔が生している。なんだか木霊が出て来そうな森を歩いていくと、2290mの小ピークに出た。岩の上に立つと視界が広がり、いつの間にか肩を並べた瑞牆山が真横に見える。目指す小川山には薄いガスがかかっていた。
奥秩父らしい深い森を辿り山頂へ
2290mの小ピークから先、2347mのピークの少し手前で再び視界が開けた。今度は小川山が近くに望まれる。もう標高差は余りない感じだ。比較的平坦な登山道を歩いてゆくと、辺りの木々の樹高が低くなり、明るい感じの森になって来た。廻り目平らからの登山道と合流し、シャクナゲの間を進む道をひとのぼりすると、小川山の山頂に到着した。三角点と標柱がある山頂は、辺りをシャクナゲの木々が多い展望は無い。深い森に包まれた、いかにも奥秩父の頂らしい山頂だ。静かな森と苔生した林床を進む登山道歩きが出来る小川山。この日も八丁平から先は、瑞牆山荘から登った単独行の登山者一人と、山頂で出会った廻り目平らからの二人連れの登山者としか出会わなかった。静かな森を楽しむ山歩きの楽しさを再認識した小川山であった。